想像界三密経

(序文) 2020年4月7日、新型コロナウイルス感染拡大に対応して 「緊急事態宣言」が日本国政府により発令された。 それに伴って、国民には仕事や買い物などでの人との交流を控え、なるべく家にいるようにする「自粛」が要請された。実施する期間は4月7日…

指宿のタクシー運転手の話

今年(2018年)の12月、編集者の住友和子さんが亡くなった。 ライターとして随分お世話になった方だ。ミュージシャンズミュージシャンという言葉があるが、住友さんはエディターズエディターと呼ばれるような編集者だった。あのINAXブックレット・シリーズを…

「声」の書評家----------- 倉本四郎

「新潮」2010年5月号で発表した書評家・倉本四郎についての原稿をUPします。 私は、『ポスト・ブックレヴューの時代 倉本四郎』上・下巻(右文書院)という本を編纂しています。 倉本四郎の書評を集めたものです。その下巻を出した際に書いたものです。 ==…

海の家時間

海の家時間 2013年10月、僕が仲間と編集していたメールマガジン「高円寺電子書林」が休刊になりました。 以下にpostしたのは、2012年8月号に掲載した「海の家時間」という記事です。 2012年8月、葉山の海の家で、プルーストの『失われた時を求めて』をテー…

ホットなボリス・ヴィアン!

ホットなボリス・ヴィアン! そして黒人音楽都市パリ 〜鈴木孝弥インタビュー〜『うたかたの日々』や『北京の秋』などを書いたフランスの作家ボリス・ヴィアン(1920-1959)。彼がジャズを愛し、自らトランペットを演奏、またレコードに付いている「解説/紹…

浅川マキ、代々木忠

レヴュー「喫煙の仕草は何を意味するか----DVD「浅川マキがいた頃」について」 このDVDを手渡された後、下北沢の老舗の音楽喫茶「いーはとーぼ」に行った。マスターの今沢裕さんが浅川マキと親しいことを知っていたからだ。 2010年1月17日、浅川は名古屋の「…

アメリカンヴィンテージと動物の干物

アメリカンヴィンテージと動物の干物ある夕方、一人の男と出会った。アメリカの古着を売っている店をかつて経営していた。年齢は50代後半だろうか。生ビールを呑みながら男はこんな話をした。 「店の若いのをアメリカに行かせて買い付けの旅をさせる。一月く…

食品工場とJ-POP

食品工場とJ-POP 今から3年前のことだけど、僕は工場で働いた。手持ちの金がまったくなくなり、先の原稿料の支払いの予定もなく借金もできない状態だったので、京浜工場地帯の食品工場で働くことにしたのだ。ファミリーレストランなどに出荷する肉料理やスー…

アジアハウス論

ここで何度か触れた山形国際ドキュメンタリー映画祭で出会ったスペース「アジアハウス」についての原稿を掲載します。 雑誌「CITY&LIFE」で書いた山形国際ドキュメンタリー映画祭についてのレポートと重なる部分がありますが、異なる視点で書いています。 ●…

カリフォルニア高速鉄道/ブルース・スターリングのキオスク

カリフォルニア高速鉄道/ナチュロック/ハドソン川の奇跡/ブルース・スターリングのキオスク JR九州の列車デザインをしている水戸岡鋭治さんとのトークショーが終ってからも、鉄道のことを考え続けているんだ。 今週の月曜日(2月2日)朝日新聞朝刊に内蔵…

水戸岡鋭治さんとのトークショー

1月26日「デザイン列車 翔ける 旅する空間の生み出し方」というタイトルのトークショーを行った。 現在、東京・京橋のINAXギャラリーで行われている展示「デザイン満開 九州列車の旅」に付随するイベントで、JR九州の列車のデザインを手掛けている水戸岡鋭治…

2008年歳末のメモ

築地で歳末恒例のおせち料理売りの仕事をしてきた。兄と一緒にした。兄は犬が歩いてくれば可愛い可愛いといい、イカアラレが美味しいと感じたら、一日に何度もイカアラレの話をしている明るい人なので楽しかった。そしてすご〜く愛情深いところが垣間みれる…

米 空 結婚式

米 空 結婚式 夕方、米を研ごうとしたその時に、今、そこにある白い米が、どこか遠くの国の婚礼の空では大きく撒かれるのだと思ってしまうその時、今ここでないもののパレードに囲まれて、夕暮れの台所がやにわに賑やかになる。 しかしふと疑問がわく。そう…

シュヴァンクマイエル/個室ビデオ集落/九州列車の旅

来月の11月6日から、西荻のギャラリーMADOというところで展示会をする。「錬金術の招待状」というもの。私はここで、ヤン・シュヴァンクマイエル関連の物品、たとえば、彼が作った蔵書票、ポストカード、それからシュヴァンクマイエルものとは別に「成金男の…

枝川公一/テレビ/喰始

ブログを一月以上も書かなかった。その間はいろいろなことをした。9月11日は、神保町の東京堂書店で倉本四郎をめぐるトークショーを行った。松山巌さんや枝川公一さんと司会者として話をした。松山さんとは何度かお会いし、そのキャラクターに魅了されてきた…

片岡義男の『白い指先の小説』について

片岡はその登場人物を「美人」という、現代の小説では少々古風な感じに聞こえる言葉を直接的に使って表現する数少ない作家だ。 片岡の小説を読んできて、何故、そのヒロインは「美人」なのか? といつも思ってきたが、ここではあっさりと小説が始まるその時…

9.11のトークショーで、荒木経惟さんの写真公開

先週の土曜は、倉本四郎さんの命日だったので、作家の森まゆみさんと一緒に葉山の倉本家にお伺いし、お線香をあげてきました。 森さんには、『ポスト・ブックレビューの時代 倉本四郎書評集』の下巻(10月刊行予定)の解説を書いていただいています。 倉本家…

beach hut tour 03

8月2日 関西国際空港で見送り。すぐにリムジンバスに乗って高松へ。約3時間のバスの旅だ。いかにも帰省するといった雰囲気の家族や人が多い。 長距離バスで高松に行く……村上春樹の『海辺のカフカ』を思い出す。あの小説で惹かれるところは上巻で、戦争中に起…

beach hut tour 02

7月31日 朝早く起きて一色海岸の海の家「ブルームーン」や「海小屋」の朝の様子を見た。それから旅のためにスーパーで歯ブラシと髭剃りを、この地域ではビーチサンダルで有名な店、げんべえでビーチサンダルを買い、バスに乗って逗子へ。駅前の樹木の下のベ…

9.11にトークショーをします!

『ポスト・ブックレビューの時代 倉本四郎書評集』上巻(右文書院)の刊行を記念して、9月にトークショーをすることになりました。 ================================== 『ポスト・ブックレビューの時代』(上)刊行記念 …

beach hut tour 01

7月30日 海の家を巡るbeach hut tourを開始した。 逗子の花火大会の喧噪をくぐりぬけて、葉山へ行った。 一色海岸のバス停で降りると、ひっそりとした夜の街だ。食堂の脇を入っていくと、自分が小さな頃の夏の夜の一本道がそこにある。 家族一同テレビを…

『ポスト・ブックレビューの時代 倉本四郎書評集 上巻』完成!

先日お知らせしました『ポスト・ブックレビューの時代 倉本四郎書評集 上巻』(右文書院)の見本が出来上がってきました。書評家・倉本四郎が1976年から1997年までの21年間、「週刊ポスト」(小学館)誌上で続けてきた連載記事「ポスト・ブックレビュー」の…

機内誌/フランス装/名作

JALの機内誌に原稿を書いています。この6月、JALの飛行機に乗ったなら『SKYWARD』を見て下さい。「沖縄 気持のよい琉球の家を訪ねて」という記事です。沖縄の住宅を巡る旅をして書いたものです。北部の集落、備瀬の家やフクギの並木、本部町の森の中の家、宜…

楢山節考の仮設バー/東京サイハテ観光千駄木ほうろう

行ってみたかったバーがある。「ファイブパーセントブレーク」という店。今村昌平監督の作品『楢山節考』の撮影時に、美術担当の稲垣尚夫氏が馬小屋を改造して作った。「200%働いて、5%遊ぶ」という意味の撮影スタッフと俳優達のための仮設酒場だ。 映画の…

人間通/海岸ビルヂング

沖縄取材に同行した女性編集者はなかなか興味深い人だった。沖縄の夜、写真家やコーディネーターらとあのソーキそばがうまい、この泡盛はどうしたこうしたのといいながら酒をただただ飲んでいるその隙に飲み屋のママとカウンターで何やら話している。次の日…

「東京サイハテ観光」房総ツアー

このblogでいっていたマジカルミステリーナイトマイクロバスツアーの正式名称は、「『東京サイハテ観光』房総ツアー」。その旅に16〜17日に行ってまいりました。交通新聞社の『東京サイハテ観光』(中野純=文、中里和人=写真)の刊行記念で行われたもので…

美濃/京都/風にさらされて

いくつかの用事のために、美濃と京都に行ってきました。 美濃では、ある民家を撮影し、美濃紙を購入。 京都の用事のひとつが、いくつかのアイテムのための書店営業。京都の恵文社一乗寺店へ。魅力的な空間。しかし、圧倒的に女子の世界でした。 ちょっとだけ…

昨日は、編集/ライターの河上進さんと、入谷の「なってるハウス」で落ち合った。 OKIDOKIのライブを見るためである。 多田葉子(alto sax,pianica,etc) 臼井康浩(guitar) 関島岳郎(tuba,recorder,etc) 即興演奏を行うグループである。 よい演奏であった。楽…

赤毛のCody

ヴァン・モリソンがいかに不機嫌な態度で唄い、且つ感動的なステージを作るかを教えてくれたduke377さんに、感謝を込めて、以下のテクストを贈る。 http://d.hatena.ne.jp/duke377/ =============================== 『赤毛…

今年最後の日記

恒例の暮れの築地の仕事(四日間だったけれど)を終えた。これから数日だけど休めそうだ。朝5時半くらいから栗きんとんを売りつつ、書店からのポストカード追加注文への対応をこなし、市場近くのカフェで自分が書いた記事が載っている雑誌を読んで休憩し、夜…