Flying Books

某所でFlying Booksの山路和広さんと会った。一緒にいたのがスワノセのコミューンにいた者だったので、日本のビートやヒッピーの流れにいる人の話になったのだけれど、まだ30になったばかりの山路さんだが、そのラインの人たちのことをよく知っている。


Flying Booksは渋谷にあるカフェやイベントスペースを兼ね備えた古書店だ。初めていった時はあまりいい書店とは思えなかった。実は、ここ10年くらいの間に出てきた新しい傾向の古書店で、おもしろいなと思ったものはほとんどない。個性的に本をセレクトしていそうで、ある決まったパターンで選ばれた本しか置かれていない書店が多いからだ。特にビートやヒッピーに関するセレクションのワンパターンは、すごいもので、棚に近づくだけであくびが出そうなくらいの若者古書店は多い。


しかし、そういう古書店の店主や店員と話すと、本のことをおもしろく考えている人が案外いる。話をすると、その本屋が興味深い空間に見えてきたりする。Flying Booksの山路さんも、書物やその著者たちをとても大切に扱っていることが、ずんずんわかった。あの渋谷の興味をもてなかった空間が違った色合いで見えてきてしまった。


その日、知り合いが山路さんからいただいた本、晶文社から出たばかりの彼が書いた単行本『フライング・ブックス』を、その知り合いから借りて一夜で読んだ。いやあ、おもしろかった。彼のしっかりとした経営に関する考えに関心したりしたのだが、一番強く感じたのは、ロッカーのインタビューの時代が確実に終わったんだということだ。ロックバンドがファーストアルバムをリリースするまでのいきさつを読むことが意味を持っていた時代は、はるか昔。店をオープンするまでのことを書く言葉が光り輝いている。不思議だな。
そして、この本、日記本なのだ。店に行き交ういろいろな人のことが書かれている。日記は、お店の人のロックミュージックとして適切かもな。
晶文社が、こうしたロックアルバムをシリーズとして適切にリリースしだしたことが、とてもうれしい。