BankART 1929


 今日、「BankART 1929」というプロジェクトの記者会見のために、新しくできた横浜みなとみらい線馬車道駅まで行ってきた。
BankART 1929」とは、横浜市がこの土地にあった元銀行のふたつの建物を芸術文化創造のために利用していこうという実験プロジェクトである。


 対象となっている建物は、ともに1929年に建てられた旧第一銀行横浜支店と旧富士銀行横浜支店。運営実験期間は2004年3月から2006年3月までの2年間。2つのNPO団体が運営主体となって事業を行うことになる。


 事業内容としては、企画展(大野一雄フェスティバル)、元銀行の部屋をアトリエとして貸すこと、美術学校、カフェ、そしてラボ設立(大野一雄土方巽アーカイブ設立準備室や歴史的建造物の活用研究を行う「ランドマークプロジェクト」)などがある。


 記者会見の後、内覧会もあったので、その元銀行の建築空間を見てきた。古い銀行によくある、あのギリシャ神殿のような仰々しい飾りのついたばかばかしい空間。ダンスや美術展を行うには決して使いやすいとはいえない空間だと思ったが、いくつかあるアトリエとして使用できる部屋は、何か新しいものを産み出す可能性のある空間として感じられた。


 3月から北川フラムの講演や、珍しいキノコ舞踊団のダンス公演などいくつかのオープニング企画が行われだす。自分を刺激するスペースを求めているアーティストは一度見に行った方がよいと思う。


 今回記者会見に出かけた理由は2つ。
ひとつは転用空間への興味。
因に、このblogのテーマはニュースタイル海の家なのだが、私はこのスペースを産業構造の変遷で凋落した海水浴場のかつての海の家が、新たな経済構造の中にある労働者の暮らしのために転用された空間のモデルのひとつとしても考えている。


 もうひとつは運営主体のメンバーにPHスタジオのメンバーが入っていたから。彼等は川俣正のアシスタントグループから生まれた建築と美術の境界で作品発表をしてきたグループ。たとえば今、彼等が行っているプロジェクトのひとつに「船をつくる話」がある。これは広島県の灰塚という場所で、ダム工事のため水没する地域があるのだが、そこに巨大な船を作り2005年ダム完成時の水を満たす実験時に水位の力で、山の上に船を移動させるというもの。PHスタジオはこのプロジェクトを1994年あたりから、地域の人を巻き込みながら、しこしこと行い続けている。
このあたりのやり方が好きで、彼等には時々会って話などを聞かせていただいている。
PHスタジオが関連することは何か応援したくなってしまうのだ。


 転用空間とPHスタジオ。けっこう興味がわく組み合わせである。このプロジェクトの中身、私も何か考えてみたくなった。近々、また「BankART 1929」の事務所にいってみようと思う。