アルミ海の家建設の独特なテンポ

朝、カメラマンの佐藤隆俊さんと一緒に一色海岸へ。アルミ海の家の建設現場へ。独特なテンポの仕事運びだ。ものすごく停滞したりするのだが、仕事のテンポがよくなると、あれよあれよというまに柱が立っていってしまう。この仕事の独特なテンポはアルミという素材の性質と関連している。精度が高く、鉄に比べてものすごく軽いからだ。


精度が高いということは、プラモデルを作るように、はめ込んでいくだけで建築ができてしまう。ただしミリ単位の誤差が許されない、あるいは通常の建築工事にはある「逃げ」というものが一切なく、完全にしっかりと誤差なく作り込んでいかなくてはいけない。そのため、ものすごく現場では悩む、ミリ単位で悩む。しかし決まってしまえば、学習雑誌の付録を作るように、凹凸をはめ込むような形で、しかもH鋼を一人でもって、そこにまた一人でもった柱を建てたりすることができる。


午後から、経団連ホールで行われた「アルミ建築フォーラム」へ。伊東豊雄山本理顕難波和彦らが建てたアルミ住宅も、この独特なテンポで建てられたようだ。


「アルミは軽いから、宅急便の人が住宅用の柱をもってきてくれるような世界ができあがる」と山本氏が語った。そしてアルミ住宅設計にあたってアルミサッシ屋さんが家を建てるような世界を夢みたこと。しかし、実際はその精度の高さに悩まされ、やはり建設工事現場のベテランの技術と経験に相当頼ってしまったということも話していた。


山本氏のアルミ建材がもつ自由さへの好評価に対して、伊藤氏は自由のもつしんどさを語った。構造体がそのまま壁や屋根になってしまうこと、外部/内部の概念の帳消しなどができる自由さは、パーツそのものをゼロから作れるところからきているわけだが、そのパーツ作りが個々の設計家にまかされているため、反対に基本形のないしんどさ、混乱を強いられるということだ。


難波氏はそのような状態は、19世紀の建築家が鉄という素材に出会った時に起きたしんどさと混乱さと似ていると語った。当時の建築家は鉄という建材を現在の建築家よりかなり自由に使っていたのだと興味ある話をした。