隆正、和次郎、みのる、安治、ピエール、そしてクーツェ

●今、建築会館のホールで「2004吉阪隆正展」が開かれている(12/3〜12/27)。
吉阪隆正は建築家であり、集落、建築などを巡るフィールドワーカー。
メモ愛好家には、ぜひお勧めしたい展示。
メモ愛好家というのは、ノートにしっかり書くのではなく、さまざまな用紙を利用して書くその文字や、その用紙(たとえばナプキンや名刺)のあり方を愛するタイプで。実は私はそのメモ愛好家なのです。ここでは、吉阪隆正がパーティの招待状などの裏に書いたメモが、どんな用紙に書かれているのか分かる形で展示されている。それがうれしい。メモ好きにはお勧めです。


●吉阪隆正のお師匠さんにあたるのが今和次郎だが、私の家のトイレに置いてある雑誌「anan」昭和47年6月5日号に今和次郎についてのレポートが載っている。この写真と文章がとてもいいんだ。よく街の変人のパターンに、植木を勝手な形に刈り込むというのがあるのだけど、今和次郎はつげの木の枝をテーブルの形に刈り込んで、そこにお茶セットを置いて新聞なんか読んでいる。それも実に地味な小使いさんジャンパーを着込んで。「あそこ(芸大)は美術制作並びに販売業者養成学校なんだな。ぼくは販売のほうがまるきりダメ。で、絵じゃ食えないと諦めて、どこでもいいから、小使いでもいいから、そういって頼んで、早稲田の理工学部にすべり込ましてもらった」なんていっている。


●この記事は「おかしなオジサン3」というタイトルがついている。1は作家のきだみのる。「10歳の女の子と同棲生活」というタイトルでめちゃめちゃに乱雑な部屋に少女と立つ、作家きだがかっこいい。この少女がある作家の小説のモチーフになる人だ。


●そして2は花森安治。多分写真嫌いの花森は逃げたんだろうな。写真は1点。可愛い顔に撮られている。3人のファンであるなら、この記事は見ておいた方がいいかもしれない。


●そうそう、11/25には吉祥寺でピエール・バルー映画祭に行ってきた。キリストがここで死んだといわれている青森の戸来村の祭をピエール・バルーがビデオで撮影したもの、それから北海道の自分たちのライブツアーを撮影したもの。
ほとんど作品としておさまっていないところが、今の自分には好ましい。
楽しきフィールドワーカーとして彼はいた。
今の自分にとってピエール・バルーは、今和次郎なんかの流れの中にある。


●今、聞いている音楽はクーツェの『ボロロック』(off note)。どこかの工場の片隅で隠されていたはちみつぱい=京浜工業地帯サウンズ装置が、関西貧乏ソサイエティに秘密裏に運び込まれ、それを動力に一度だって踊ったことがないシンガーが、突然ダンスミュージックを作ってしまったというエミール・クストリッツアの物語のようなアルバムだ。