80年代都市戦争関西疎開派としての都築響一

また脱線してしまうが『en-TAXI』最新号で都築響一の特集をしているが、なんだか詰めが甘い。それはいろんな箇所に出ていて、たとえば彼の仕事を並べている「都築響一WORKS博覧会」の書籍欄にとても大切な本が落とされていたりする。責任編集者には本マニアが入っているのにこれはどうしたことだろう。


「TOKYO STYLE」が刊行された1993年の1年前の92年テレスコープ叢書のひとつとして出された『京都残酷物語』(建築・都市ワークショップ)という都築の本がある。これは京都の街並を破壊する建築、高松伸などの現代建築家を鋭く批判する写真とテクストで構成されたものであり、バブルの時代、都市が徹底的に破壊されていた都市戦争の時代を都築がどう過ごしてきたのがよく見える本なのだ。都築は80年代都市戦争末期では京都に疎開していたのであり、しかし京都空襲として出会ったのが高松伸のSYNTAX(北山通り)であり、嵐山にあった山田邦子や梅宮辰夫、コロッケのタレントショップなのだったのだ。
「日本でもっとも美しい(美しかった)風景がもっとも醜いものに強姦輪姦されるという、きわめて現代的な嵐山の状況は、現代日本のリアリティに触れたいと望む外国人訪問客をひきつけてやまない」と都築は『京都残酷物語』で相変わらず英文と並記してそのテクストを書く。
80年代都市戦争関西疎開派としての都築がここにいる。この立場はその後の彼の仕事を見るのに見逃せない地点だと思う。