海辺のFINAL HOME

今日、ビーチクリーンをFINAL HOMEというコートを着て行った。

「もし戦争や災害で家を亡くしてしまった時、ファッションデザイナーである私はどんな服を提案できるか、またその服は平和の時にはどんな姿をしているのか」
その問いを自分にしたデザイナーがいる。津村 耕佑。
44ものポケットが付いたナイロンコート。ポケットに新聞紙を詰めれば防寒着に、非常食や医療キットを入れて災害時に着れば非難着になるコート。これを着て街にうずくまっていると小さなテントにいる感触がある。商品になっているかは不明だが、たしかこのバリエーションで赤ん坊を抱きかかえながら母親が着るコートがあり、まさにそれは子供と母を守るテントのような服だった。さらに、このコートは、“リサイクル”適応商品で、使わなくなった場合はNGOなどの機関を通じて被災者や難民の救済に寄付できるようになっている。そのルートの入り口になる連絡先がタッグとなって服についている。
FINAL HOME
http://www.finalhome.com/


津村がこの服を発表してすぐに、私は手に入れた。そのコンセプトと“FINAL HOME”「究極の家」というネーミングが気に入ったのだ。


だが、まあ、実際は自分には似合う服ではなかった。ポケットの多さも実際に使うときには、どこに物を入れたのかがわからなくなったりした。それに、機能性が突出した服、たとえばミリタリー系の服もそうだと思うのだが、どこか異様なところがあり、着るとなんだか疲れてしまうのだった。そんなこともあり着るのは、蜂の巣を壊すときの防備とサッカーなどのスポーツ観戦のときの防寒のためだけだった。


しかし、いつも着ていたコートの一部が擦り切れてしまったこともあり、今年の冬はしょうがないなといった感じでFINAL HOMEを着だした。


なんだか去年の冬よりフィットする。昨年が災害の年だったからだろうか、このコートがなんだか肌に合う。実際自分で体験した、風の力で家が軋む、あの瞬間の恐怖を私の身体の皮膚は忘れていないのかもしれない。疲れるような肌合いがなくなった。
しかし見た目は多分変わらないだろうな。自分にはやはり似合っていない。


コートの基本カラーは3色。「存在を知らせるための“オレンジ”・森に紛れる“カーキ”・都会に紛れるブラック」。私が手に入れたのはブラック。自然と都市が交錯してる場所「海辺」で、FINAL HOMEのコートを着てビーチクリーンを行った。