ラジオとレイヴ


10月8日の土曜日は、横浜トリエンナーレでラジオをやった。大榎淳とみかんぐみ、上屋番の「FMヨコトリ」でのラジオ番組である。
海の家の話を発端に、さまざまな人々が出会えるスペースについての話をした。
みかんぐみのHさん、Boat PeopleのSさんを交えての話だった。


みかんぐみ
http://www.mikan.co.jp/

BOAT PEOPLE Assosciation
http://boatpeople.inter-c.org/13.html


大榎とは80年代前期のラジオホームラン時代からのつきあいだ。
ラジオホームランは自由ラジオと、フリースペース的な活動が合わさったムーブメントだったけれど、以来、私自身としては、スペースというものにずっと関心があった。


夏に書いた原稿「公共スペースとしての海の家」が載っている雑誌『CITY&LIFE』77号(第一住宅建設協会)を編集部に送ってもらい、その日の朝に届いたので、雑誌を持参し、その記事の話を発端にして人々が集まるスペースについて語ったのだった。


雑誌に載っている毛利嘉孝の記事の中で語られている新宿の喫茶店ベルク(大好きな店で新宿駅真下にあるフリースペース的味わいのある喫茶店)や、同じく新宿にあるアナルコパンク系ショップ、イレギュラー・リズム・アサイラムの話などもした。さらにBoat PeopleのSさんから、横浜の水辺で興味あるスペースの話を聞いたりしたのだった。


ドヤ街を含むマイナースペースを、いかにもマイナーマニア的な語りで語るのではなく、いかに正統的に心が流動化できる場所として語れるのか、その端緒のようなものを、少しだけみんなでしゃべれたのはうれしいことだった。もしかしたら工事現場をモチーフにしたみかんぐみ設計によるラジオ屋台が、私たちの語りを救ってくれたのかもしれない。


それから気になったことをひとつ!
約2時間のラジオをしたのだけど、もし、あの場所に来て、私に声をかけられなかった人がいたらごめんなさい! ぺらぺら調子に乗ってしゃべっていたので、声をかけづらかったかもしれません。いないとは思うのですが、もし、そんな人がいたら、どうもです。


さて、その日の2日後の月曜日、私はレイヴに初めて行ってきたのだった。知る人ぞ知る「渚」に行ってきたのです。
経験してみて、この音楽世界のシステムがここまでできあがっていることにびっくりしています。知っている人は、もう10年以上も前に体験しているのでしょうが、私はある意味でのヨーロッパ文明の最先端の形に触れて驚愕しました。
(それは輝かしいものではなく、ダークで強力なものだ)

1920年代に作られたガラスと鉄の四角いビルが、20世紀そして今の建築のスタンダードになっているように、このレイヴ世界は21世紀の音楽のスタンダードになっていくだろうと思わせる力がそこにありました。


建築史家の藤森照信は、『人類と建築の歴史』(ちくまプリマリー新書)で、鉄とガラスの工業的技術をもった19世紀末の建築家たちが内面をみつめる作業に入り、私たちの内なる植物の相への探求(その表現がアールヌーヴォー建築)から、より下層へ入って鉱物の相へのダイビング(その表現がチェコキュビズム、イタリア未来派ドイツ表現主義など)へと向かい、ついにその下の相、数学の相へと入っていったのだと語っている。その数学相への探求の表現が1919年開校のバウハウスのデザイン、白い箱に大きなガラス窓のあくデザインの建築だったというのだ。そして、このデザインは世界の都市へと広まっていった。


レイブの音楽は、19〜20世紀の者たちが鉄とガラスの工業技術をもったように、20〜21世紀にデジタルと精神探求の技術をもった者たちの内面探査作業の末に辿り着いた表現だろう。それはガラスと鉄でできた真四角なビルのように、シンプルで力強い。モダニズムがどうとかいう話ではなく、ある技術をもった人間たちが深く内面への探求作業をしたということが現れている力強さが、そこにはあった。これは21世紀の都市へと広まっていくのだろう。


……音楽史がこのように進展していくなんて、私なんかには想像ができなかった。
さあ、韓国のバンドPURIの公演パンフを作らねば。神明(シンミョン)とトランスに架け橋を掛ける作業だ。