雪の日

雪ですね。
早朝から出かける用事をとりやめて、庭を見ながらチンザノの甘〜い奴を寝床に持ってきて雪見酒をすることに。
雪をぼんやり見て本も読む。『アンナ・カレーニナ』を読んでいたら地主たちが会話をしている。
「でも、どうやって百姓どもを教育するんです?」
「百姓たちを教育するには、三つのものが必要ですな、つまり、学校、学校、学校の三つが」
という会話にぶつかる。


私、最近『ブレア時代のイギリス』(山口二郎 岩波新書)ってのを読んでおるのですが、イギリスのブレアが首相に就任する前に、労働大会でいった名文句が書かれてあった。似ているぞ。


「私にやりたいことは三つある。それは教育、教育、教育だ」


ブレアはメディア戦略をそうとう意識していて、演説のコピーライターに優秀な人をつけて、かなり戦略的な発言をする人らしいが、この演説の言葉を書いたライターは、トルストイの先の言葉を意識したのか?
それとも「三つのことがある、それは」というは常套句なのだろうか、それともたまたま私が読んだもので似たものがあったのか?


こんなことを考えるのはブレア首相は、大河小説の登場人物みたいなキャラクターだからだろう。ブレアのことを読んでいるのは、ほんとのことをいうと小泉路線が気になるから。リーダー個人のイメージや魅力で国民の支持を動員していく手法を山口の本では「政治の人格化」って呼んでいるのだけれど、この方向性はどうなっていくのか。その中で都市空間はどう変貌を遂げていくんだろう。小さな政府路線やその修正策の中で、街路や広場や駐輪場や家はどう変わっていくんだろう? 雪で庭は真っ白だ。


甘〜いチンザノを飲みながら考える。
今見たい、夢の演劇は、ヨコスカとバーミンガムが錯綜する群衆劇。 コイズミや祖父のヤクザや、イギリスのモッズ、ブレア、それになぜかポール・ウィリスやスチュアート・ホールなんかのカルチャル・スタディーズ派の学者も登場する「教育とイメージ」をテーマにした青春演劇。書き手は山元清多がいいかな。なんて妄想する。


さて、なんか音楽を聞こう。みぞれ降る中に立ちつくすコート姿のマーヴィン・ゲイのジャケット写真ということで、「ホワッツ・ゴーイング・オン」。自然に囲まれているとはいえ、都会的な生活をしている自分にはやはり雪はロマンティックなものだ。大雪にさいなまれている豪雪地帯では、大変なんだろう。こういう時に、テレビがないことはほんとにいいことだと思う。自然災害に苛まれている人たちを、たいしたことがない映像で見るのがつらいから。
昨年、取材でうかがった青森市では、一冬の除排雪費用が平均15億円。2004年は大雪で31億円だったと教えていただいた。小学校が3つではなく2つ建てられる金額である。今年はもっとすごい金額ではないだろうか。
青森の地方公務員の方の視覚の中で、降る雪はどう映っているのか。その映像と小さな政府路線はどう関連していくのだろうか。