500ポンドの口座

下見の日、東雲キャナルコートCODANにあるコンビニエンスストアとパン屋とカフェが一緒になったような店でコーヒーを飲んだ。若い主婦がおしゃべりをしている。団地の内部を貫くS字街路を歩く住民の姿を見る。それから『ブレア時代のイギリス』を読む(山口二郎 岩波新書)。
イギリスでは「2002年9月1日以降に生まれた子どもに対して、政府が500ポンド(10万円)の小切手を支給し、その子ども名義の預金(投資)口座を開くという政策」があるらしい。低所得家庭の場合にはそれにさらに250〜500ポンドが加算される。この口座は、その子が18歳になるまでお金を引き出すことはできない。親あるいはその子の面倒を見る関係者は、毎年1200ポンドを上限としてこの口座に積み立てを行なうことができる。


「かりに、500ポンドの元金に毎月100ポンドずつ積み立てていけば、18歳になった時、元金は2万2000ポンド(440万円)あまりになる。これに利息を加えれば、2万5000ポンド(500万円)程度の資金が貯まることになる。この制度によって、18歳の若者が自立した人生を歩んでいくために必要となる高等教育・技術習得の費用や起業のために元手を準備させようというのが、政府のねらいである」


機会均等という理念。そのための方策。わかりやすいですね。山本理顕の空間のようにわかりやすい。


考えてみれば私の義理の妹という関係になるんだろうか、その人は、テート・モダンに作品が所蔵されているというイギリス在住の現代美術の作家だ。彼女が産んだ赤ん坊を見せてもらったが、あの子は2002年9月以降の生まれではないのか。あの子のためにイギリス政府が開いた口座があるのだ。今、私はサッチャー以降、ブレアのやっていることがすごく知りたいので、ありがたい。なんだか近しいものと感じられてきたよ。