父の言葉

子どもといえば、横須賀線に乗っていると、小学校に上がるか上がらないかくらいの男の子が長男に弟一人、妹一人の子どもたちと両親から成る家族に出会った。横に東海道線が走っていた時、父親が「ほら、見て、オレンジ色に塗装された東海道線の電車が走っているよ、3月にもうなくなってしまうから、よく見ていてね」といった。それから「これからは全部アルミの電車になってしまうんだけど、このオレンジ色の方が味わいがあるよね」といったので、横に座っている子どもたちと一緒に東海道線の車両を見ると、確かに味わい深い。
また、電車が多摩川を渡る時、その父親が「ほら、見て、鉄橋だよ」という。子どもたちと一緒に私も窓の外を見ると確かに鉄橋である。川の上を渡す鉄の組み方が鉄モノとして身に染みる。
その父親は私より年下の人だが、父の言葉というものは威力があって、その声に導かれ目を向けていくと、世界は父がいうように見えていくのね。