下駄を履いたネズミ

早朝、台所の方からガサゴソと音がするので、行ってみたが何もいない。ネズミは逃げたのだなと思った。眠ると、また音がする。行ってみて台所の奥を見ると、ゴキブリホイホイがあった。ゴキブリがひっかからないので、そのまま放置していたものだ。覗くとネズミが捕まっていた。家に出るネズミは、都会の繁華街で見るような巨大なネズミではない。種類も違うとても小さなネズミだ。ハツカネズミではないか? 一瞬見た時、かわいらしいと思ってしまった。それではゴキブリと同じように処分することができない。逃がしてやろうと思ったが後ろ足が粘着シートでくっついている。近づくと前足だけでもがいて逃げようとするが動けない。しょがないからゴキブリホイホイを持って庭に行き、ハサミでその住宅の形をした箱を解体していく。粘着したものは、すぐにはとれないだろうから、歩けるような感じで後ろ足が付着した部分を切っていく。
切れたところで、その小さなネズミは草むらに逃げていった。ボール紙の小さな下駄を履いたネズミとして、これから生きていくことになってしまった。
ネズミを見た瞬間から、何も深く考えずしてしまった行動なのだが、結果として「下駄を履いたネズミ」にさせてしまったのだ。


このイメージは悪夢となって、私をこれから苦しめるかもしれない、あるいは可愛いらしいファンタジーとして夜ごとの夢に出てくるかもしれない。寝ぼけ眼でなんだか私は、すごいことをしてしまった、と後悔しだしたのは、お昼になってからのことでした。