山王草堂/ブックス丘/他者が見た夢を、もう一度語り直すこと

この1ヶ月の間は、けっこう家に閉じこもって原稿を書いていたのだけど、そういう時は、2時間くらい家を出て散歩していた。
まず道を渡ってほんの少しのところに徳富蘇峰が住んでいた山王草堂の庭を公園にしている小さなスペースがあるので、そこでぼんやりする。逗子の近くに住んでいた頃は弟の徳富蘆花の公園にいったりしたな。そこから品川区に入っていって、ぐんぐん歩く。歩いていって、東急大井線の戸越公園くらいまで歩いてしまう。ほんとは池上線の戸越銀座駅まで行きたいのだが、やはり帰らなくてはいけない。


この戸越公園駅の近くに、「ブックス丘」という名の書店がある。
ただふらりと入ったのだが、ああ、いい本屋だなと思った。
小さな店である。コミックと雑誌がほとんどで、あとは実用書ぐらいか?
ただ本が並んでいるのではなく、書店の人の手によって何かが加えられていた。
(1回しか行ってないので、何かはわからず。これから何度かいって考えてみよう)
それと、私の場合、よい書店というのは、サウンドのよい本屋なのだ。この店はかかっているラジオの音が非常にうまく聞こえた。
ラジオのパーソナリティーは新聞のニュースを題材に語っていた。話し言葉のトリックをうまく使いながら警察への批判を語っている。マンガを立ち読みしながら、その言葉の流れに、うまいな〜と思っていた。そのラジオの音に、ある漫画が上下なのか上中下のシリーズなのかについて、書店員同士が語りあう言葉がサウンドとして重なっていく。


友人Tに誘われて飲み会へ。ついに保坂和志さんと遭遇。友人Tが見た中沢新一が出てくる夢を、木田元が出る夢を、「俺にしゃべらせて」といって滔々と語り出す保坂さん。
ある人物が見た夢のストーリーを、違った人間がもう一度語り直すというあり方。精神分析もそういうことだが、ここに鍵ありますね。なんか少しわかったぞ。